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『気に入ってくれたみたいで良かった。』 昨日の夜、部長と見つめあって眠る時。 そう言って、部長はリングにそっと口づけた。 昔、冬也が同じようにしたことを一瞬思い出したけど、部長のは比べものにならないくらい安心できる。 『来年の今日は、何が欲しい?』 って、おでこにキスされながら聞かれて。 『一緒に居られたらいいです。』 『じゃあ、俺が欲しいものちょうだい?』 『あまり高いものは買えないですよ?』 なんて、他愛ない話をして。 どちらからともなく瞳を閉じて、何度もキスをした。 『ふふ…。』 思わず、幸せの声が漏れる。 『なーに、ニヤけちゃって。部長に会えただけで、本当に表情が明るくなるんだから。』 出勤してきた武田さんと、自販機の前で会った。 『あれっ?!高梨ちゃん、それ。』 武田さんの視線の先は、昨日のリング。 華奢だから目立たないと思ってたけど、さすがにダイヤは存在感があるみたいで。 『昨日、もらっちゃいました。』 『部長ったら、溺愛ね。朝からごちそうさま。お昼に尋問させてもらうわよー。』 野菜ジュースを買った武田さんが、先に企画部に入っていった。 私は、その足で営業1課へ。 朝一の内線は、神谷さんからのお呼び出しだと思ったら、瀬名さんからだった。 『失礼します。おはようございます。』 さすが1課。出勤時間20分前にして、ほぼ全員がすでにパソコンを開いたり、電話をして仕事を始めている。 『彩星ちゃん、こっち。』 瀬名さんと初めて会った、簡易的な打ち合わせに使う場所。 朝から爽やか知的オーラ全開の瀬名さんが、ヒョコっと顔を出して手招きしている。 田村さんは、まだ来てないのかな。 もうこれ以上、睨まれたくないんだもん。 『おはよう。』 『おはようございます。どうしたんですか?』 『デザインをお願いしたい話があるんだけど、忙しいよね?』 『gentleとのコラボで、急ぎの案はちょっと難しいんです。すみません。』 『先方に時間もらえるか聞いてみるけど、もし大丈夫だったらお願いしたいんだ。 客先が、彩星ちゃんご指名なんだって。』 瀬名さんが、眼鏡越しにウインクした。 うわぁ……カッコいい。 瀬名さんも、なかなか罪深い。 『分かりました。またご連絡ください。』 田村さんは、間違いなく面食いだ。 ……私も例外じゃないけど。
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