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マカロニを刺そうとしていた、フォークを持つ部長の手が止まる。
『木崎さんと、何かあったの?』
お昼とほぼ変わらない問いかけに、私はまた頷くだけで返事した。
冬也と再会してからの出来事が、猛スピードで目の前を駆け巡る。
木崎さんが、実はgentleの代表の息子であることは言っていいのだろうか。
でも、冬也は部長に対して、木崎と名乗っていた。
冬也が元彼だってことはどうしようか。
冬也の私に対する気持ちは、神谷さんも知っているから言わなくちゃいけないと思う。
私以外の人から聞かされたら、それはそれで嫌だろうし。
『彩星、全部話していいんだよ。それで仕事に支障が出るとか、俺がどう思うかとか……そういうのは言ってみないと分からないんじゃない?』
なかなか話し出さない私を、温かい眼差しで見守っている部長と視線を合わせた。
全部話したら、どうなるんだろう。
いくら部長がそう言ってくれても、私の心の中は戸惑ったまま、二の足を踏み続けていて。
『難しく考えないで。言ってごらん?大丈夫だから。
このまま、ミラノに戻る方が辛いな。』
冷蔵庫からビールを取り出した部長。
大丈夫だよ、って言うみたいに頷いて、私の背中を押してくれた。
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