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大きな時計の秒針が刻んでいくみたいに、ドクンドクンと鳴る心音。 頭に浮かんだ言葉から順に、声に出していくしかなくて、いろいろ考えていたものはリセットされた。 『木崎さんが…。』 『うん。彼が?』 部長が優しく私の一言一言に相槌を打つ。 『私のこと好きだって。彼がいても奪うって……。』 予想通り訪れた沈黙。 部長のことが見れなくて俯いたまま、ボリュームを絞られたテレビの音だけが私の耳に届く。 『…そっか。分かった。』 ゆっくり顔を上げていくと、部長が腕組みしているのが分かって。 さらに視線をあげると、部長は困った顔で……それでも優しく微笑んでいる。 『それは仕方ないことだから。誰かに好かれているのはいいことだよ。 でも、奪うって……宣戦布告っていうの?面白いね、木崎さんって。』 部長が、最近あまり見ることのなかった得意気な表情になった。 『それとね。』 『ん?』 もう、言うしかない。 部長には、隠し事をしたくないから。 『木崎さんは……実は、元彼なの。』 『元彼?!』 組んでいた腕を解いて、テーブルに前のめりになった部長が、眉間に皺を寄せた。 『偶然、コラボ企画で再会して……。』 『そう。元彼、ねぇ…。』 部長が今度は背凭れに寄りかかって、ピアノを弾くようにテーブルを指で弾く(はじく)。 やっぱり言わない方が良かったのかな。 再び訪れた沈黙に耐えられなくて、私はまた俯いた。
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