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非常階段のひんやりとした独特の空気とは真逆の部長のキスの温度が、私をトリップさせる。 唇の隙間から漏れる、舌が絡み合う音が閉ざされたこの空間に響く。 それは本当に小さな音だけど、今の私にはそれすらも恥ずかしくて。 『んっ……。』 終わりが見えてこないキスは、どんどん深くなっていくばかりで、私の奥まで溶かし始める。 最初は繋がれていた部長の片手が、私の顔の横にあって。 もう片方は私の項を優しく鷲掴みしている。 ブルーマウンテンのほろ苦さが、私の口内を埋め尽くす。 漸く離れた唇と唇を、甘い糸が細く繋ぐ。 部長が一息つくように、私の耳元に顔を寄せた。 『止まらなくなったんだけど、どこまでしようか。』 『ど、どこまで?』 って、ここまでじゃないんですか? 『会社の非常階段だけど、止まらなくなった。』 戸惑う私を超至近距離で見透かすヘーゼル色の瞳は、いつにも増して妖艶で。 『可愛くて、綺麗で、他の男にも告白されて…それでも俺のことしか考えられない彼女と、こんなところにいたらさ。』 項にあった部長の手が、私の鎖骨をそっと撫でていく。 そのまま、指輪をした薬指と中指が下に伝っていって。 白いシフォン生地のカットソーの上から、私の胸の上で掌が止まった。
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