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遅れてきたのか、いつの間にか冬也がいる。
そして、どういうつもりなのか分からないけど、ついさっきまで斉藤さんと立花さんが立っていた場所にいて。
『gentle beaute様、いつも大変お世話になっております。弊社の担当は…。』
冬也のことを初めて見た人が大半のこの輪の中、女子社員の視線を集めながら、原田さんの進行に合わせて質問に答えている。
『営業1課の神谷さんと、企画部の高梨さんです。』
『神谷ー、ちょっと。』
既に取引先と挨拶を交わして1課の輪の中に戻っていた神谷さんが、冬也の隣に立った。
『皆さん、こんばんは。』
冬也の登場で少し止まってしまった空気の流れを上手に変えるあたり、さすが名幹事の神谷さん。
『木崎さん、今日はご参加ありがとうございます。こんな会ですが、楽しんでいただけましたら幸いです。』
マイクを受け取った神谷さんの挨拶に、冬也がにこやかに会釈して答える。
『では、木崎様、早速ですがお願いいたします。』
張り切って進行を再開する原田さんから、冬也の手にマイクが渡った。
神谷さんが、信じられないって顔で冬也を見ていて。
冬也は、受けている視線全てと合わせていくように、端からゆっくりと見渡している。
誰に告白するの?
例えば、私に伝えてくれるとしても、こんな場所で言われたら断る勇気はない。
例えば、他の人に伝えたとしても、心の中で揺れ動いている部分が、チクチクする。
……だから、お願い。
誰か、止めて。
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