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『断らないで……お願いだから。』 次に鼓膜を震わせた声は、少し掠れていて。 『……っと、お返事は…?』 場の雰囲気を取り戻そうと、原田さんがダミーマイクを握り直した。 そっと離れた冬也が1歩、2歩と下がって、いつもの表情で私を見ている。 『…………彩星。』 私だけに聞こえるボリュームの声は、返事に困る私をさらに追い詰めていく。 私にとっては、偶然にも再会した元彼だけど、周りにとっては、大切な取引先の人で、もしかしたら中には冬也の本当の名前を知っている人もいるかもしれなくて。 だから止めてほしかったのに。 言葉にそれを出して言うことはできないけど。 この場を乱すつもりはない。 冬也の瞳をもう1度見てから、足元のブルーシートに視線を落として。 その勢いで、頷くように首を縦に振ってしまった。
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