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冷たく鋭利な刃物のようでいて、好奇に満ちている。 ……人の視線がこんなに突き刺さるものだと実感したことがあっただろうか。 断る勇気がなかった自分が、憎い。 お酒や宴会グッズが山盛りになった、ブルーシートの端。 引き続き、告白大会で盛り上がっている人たちの背中がたくさん見える。 神谷さんがすぐに1課の人を指名してくれて、それまでたくさんあった視線は、新しく現れた目の前の関心に徐々に注がれ始めていて。 『一緒にいようか?それとも、もうここから出る?』 『…元の席に、戻ります。』 今度は横に首を振った。 本当は、元の席に戻る勇気も、冬也に連れられるまま一緒にいるのも、どちらも選びたくない。 でも、今はここから逃げられなくて。 武田さんの隣を目指す途中、好奇に満ちている視線に、心が痛みを訴え始める。 『……わっ!』 突然右腕を引かれて、予定のコースから大幅に反れた。 『…ちょっと来て。』 パンプスを履ききれていない私の手を引いて、神谷さんが取引先用に敷いたブルーシートよりも奥へと進む。 『どういうこと?』 そこが目的地だとは思えない、中途半端な場所。 桜の幹に背を付けて、少し難しい顔をした神谷さんが、私に問いかけた。
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