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『広告は、白と黒の2パターンです。これはうちとgentleのカラーを出していこうと思ってます。』
『そうか。あとは先方と詰めていく必要があるな。
もしこのネーミングでいけるとしたら、& eyeの広告よりもインパクトは必要になるから考えておいた方がいい。』
『分かりました。』
部長が社内でのGOサインを出してくれた。
良かった……とりあえず前に進んだ。
『この資料、もう少し色付けしようか。16時くらいに1課に来れそう?』
『大丈夫です。神谷さんのご都合で連絡ください。』
前に進んだということは、やることがもっと増えてくるってことで。
忙しくなるけど、イメージが湧いてくるこの感覚が、クセになるくらい心地いい。
『木崎さんには、俺から連絡しておくから。』
『えっ。』
この前、逆宣戦布告したばかりなのに。
『優、何か伝えておくことはあるか?』
『んー、今のところは特に。』
長引くかもしれないと思っていた打ち合わせは意外とあっさり済んだ。
パソコンの隅に表示されているデジタルは11時まで、あと40分。
デスクに戻った部長が、携帯で話そうとしている相手が気になって仕方ない。
立花さんから受け取った書類に目を通して、承認のサインをしながら耳に当てられた携帯の向こうが。
肩でそれを挟みながらキーボードを打つ間も、ほんの少し険しく見える表情が。
私のパソコンからメール受信の音が鳴って、何の躊躇もなく開封する。
〈お疲れさま。いいじゃん、Love hunter。
いま木崎さんと話すけど、そんな曇った顔しないで。
彩星が俺から離れなければ、大丈夫だよ。〉
今、この瞬間を乗り切るのに欲しかった言葉が届いた。
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