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『昨日は朝のお忙しい時間に、お電話にて失礼しました。急な予定に合わせていただいて申し訳ありません。』 『いつもご無理をお願いしているのはこちらですから。どうぞお掛け下さい。 坂木には三浦部長がいらしている旨をお伝えしてるのですが、只今電話中のようでして、終わり次第になります。』 昨日の朝、部長が冬也に連絡して急遽決まったgentleとの打ち合わせ。 どうしても社内から出ることが難しいという冬也のスケジュールに合わせて、こちらから出向く形になった。 同じ業界にいるのに、建物の雰囲気から働いている人の雰囲気まで全く違う。 今回のコラボカラーの、白と黒みたいに。 『いつも素敵なアイディアをありがとうございます。 今日はネーミング等の件で打ち合わせですよね?』 『はい。早速お話させていただいても宜しいですか?』 『お願いします。あ、スクリーンをお使いになる時は仰ってくださいね。』 昨日、外出から戻った神谷さんと一緒に作った資料は、あくまでもgentleの意向を聞いて、柔軟に変化できるような、完成と未完成の間。 『……Love hunterですか。何ていうか、衝撃的で。』 …やっぱり。 気品と高貴がイメージのgentleには、ハンターって言葉は強かったのかもしれない。 『でも、コラボですからね。意外性って大切ですから。 私個人としては、ものすごく、魅かれます。』 私個人としては、ものすごく、って言いながら、部長に強い視線を向けた冬也。 宣戦布告、第二弾みたいになってるのは、気のせい? 『木崎さん、御社のカラーを損なうようなことはしたくないんです。 仰るように、今回はコラボですので、双方のいい部分を生かせるようなものに仕上げられる自信はあります。 可能でしたら、御社案をいくつかご提示いただけたらありがたいのですが、弊社としてはこの案で推させていただきたいんです。』 部長は、その視線には全く動じず、それどころか反応の欠片すら見せない、穏やかな表情を返した。
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