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『ミニボトルのデザイン上がった?』
『はい。これなんですけど……おまけだからって安っぽくしたくないと思うんです。』
打ち合わせテーブルを挟んで、部長と神谷さんが座る。
初めて会社に来た時と同じ雰囲気に、懐かしさを感じた。
あの日は、部長に目が釘付けで、さらに言葉攻めにあって。
今思えば、ただ構われてただけなのかもしれないのに、私は全部真に受けちゃって。
『高梨さん、また意外なことするねー。』
神谷さんが、私の資料を見てポロッと言ったその一言。
欲しかった反応が返ってきて、嬉しくなる。
今朝、部長の家で身支度をする時に見た香水の瓶。
二重構造になっていて、クリアの中にミラーボトルが入っていて。
その間の空間を、私は一目で気に入ったんだ。
『液が黒だから、オールクリアは綺麗じゃないな。その辺分かってるだろうけど、もう少し詰めて。ミニボトル自体は、GOサインもらえたの?』
『まだです。今週中にお返事いただけると思うんですけど。』
最近、時間が合わなくてなかなか同席できずにいる神谷さんが、企画の進展に合わせてスケジュール調整を始めた。
『恐らく、打ち合わせるとしたら、早くて来週ではないかと。』
『来週かぁ。俺はもうミラノに戻ってるな。優に任せるけど、逐一報告メールしてもらえる?』
『りょーかい。』
そっか……。
あと2日で、また部長と離ればなれになっちゃうんだ。
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