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手首に滑らかで、ひんやりとした感覚。
それはツルツルとしていて、軽くて。
『やっ…。』
次の瞬間、それはクルリと巻きついて私の手首を締めた。
ハッとして目を開けたら、妖艶に私を映し出す瞳がそこにあって、逃してくれない。
首筋に当たる吐息は、身体を火照らせる。
チクッとした刺激が胸に走ったかと思うと、生暖かくて柔らかい濡れた感触が、私の指を包んだ。
唇に触れる、大好きな人の体温。
指を包んでいた感触が、今度は口内に侵入って(はいって)きて。
ユラユラと揺さぶられる身体は、大きな波が訪れるのを待っているのに、それを拒むように耐える感覚もあって。
『……んっ。』
塞がれたままの唇が、空気を求める。
だけど許されなくて、どんどん私の感覚を麻痺させる。
その間も、ずっと絶え間なく揺さぶられて……。
『……部長っ…。』
……ん…あれ?
その割には、独特の気怠さが私を襲ってこない。
それどころか、目の前にいる部長はニヤニヤと得意気に微笑んでいて。
あ、手首の感触も、目に見える存在もなくて。
『……あのさぁ、気持ちよく眠ってくれるのはいいんだけど。』
部長がやっと声を発した。
『夢を見ながら、俺のこと煽るのはズルくない?
もうそろそろ起きる時間だから起こそうと思って、キスしたり、揺すったり、手首掴んで引き起こそうとしたり、あれこれ手を尽くしてるのに全然起きないし。それどころか朝からそんな声聞かせるなんて。』
夢よりも妖艶な部長の瞳に、ロックオンされて。
夢よりも甘い吐息が、耳にかかった。
俯いた視線の先には、真新しい赤い痕。
『やっぱり、もっとしたい?……昨日みたいなの。』
クスっと笑った部長の声が身体の中を駆け巡って、全身を熱くするスイッチに変わった。
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