20

8/17
前へ
/17ページ
次へ
手首に滑らかで、ひんやりとした感覚。 それはツルツルとしていて、軽くて。 『やっ…。』 次の瞬間、それはクルリと巻きついて私の手首を締めた。 ハッとして目を開けたら、妖艶に私を映し出す瞳がそこにあって、逃してくれない。 首筋に当たる吐息は、身体を火照らせる。 チクッとした刺激が胸に走ったかと思うと、生暖かくて柔らかい濡れた感触が、私の指を包んだ。 唇に触れる、大好きな人の体温。 指を包んでいた感触が、今度は口内に侵入って(はいって)きて。 ユラユラと揺さぶられる身体は、大きな波が訪れるのを待っているのに、それを拒むように耐える感覚もあって。 『……んっ。』 塞がれたままの唇が、空気を求める。 だけど許されなくて、どんどん私の感覚を麻痺させる。 その間も、ずっと絶え間なく揺さぶられて……。 『……部長っ…。』 ……ん…あれ? その割には、独特の気怠さが私を襲ってこない。 それどころか、目の前にいる部長はニヤニヤと得意気に微笑んでいて。 あ、手首の感触も、目に見える存在もなくて。 『……あのさぁ、気持ちよく眠ってくれるのはいいんだけど。』 部長がやっと声を発した。 『夢を見ながら、俺のこと煽るのはズルくない? もうそろそろ起きる時間だから起こそうと思って、キスしたり、揺すったり、手首掴んで引き起こそうとしたり、あれこれ手を尽くしてるのに全然起きないし。それどころか朝からそんな声聞かせるなんて。』 夢よりも妖艶な部長の瞳に、ロックオンされて。 夢よりも甘い吐息が、耳にかかった。 俯いた視線の先には、真新しい赤い痕。 『やっぱり、もっとしたい?……昨日みたいなの。』 クスっと笑った部長の声が身体の中を駆け巡って、全身を熱くするスイッチに変わった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加