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『瀬名さん、ボトルのデザイン上がったので見てもらえますか?』
ランチを食べに会社のエントランスを出たら、喫煙所で神谷さんとタバコを吸っているのが見えて、声を掛けた。
『あ、彩星ちゃん今からランチ?じゃあ、15時くらいに企画部行くから。』
『よろしくお願いします。』
少し遅れて、葉月ちゃんも一緒にペコッと頭を下げた。
もう少しで、会社から見える緑が薄くなっていく季節。
まだまだ暑いけど、夏季休暇からは半月が経っている。
瀬名さんからのデザイン依頼も、もう少しで完成しそうだし、あとは……今後について考えないと。
『彩星先輩。』
『ん?なぁに?』
信号待ちをしている間、葉月ちゃんが何度も後ろを振り返っていて。
『今の人って、1課の瀬名さんですか?』
『そうそう。……あれ?葉月ちゃん初めて会った?』
『はい。なかなかタイミング合わなくて、いつも他の女の子が騒いでる話だけで知ってて。』
『そうだったんだ。瀬名さんはいつも忙しくしてるから。海外出張もあるし、会った時は声を掛けとかないとね。』
『私……多分、彩星先輩みたいに、話しかけられないですっ。』
お気に入りの煉瓦造りのピザ屋さんが見えてきた時、葉月ちゃんが突然足を止めた。
『どうしたの?』
『先輩……せ、瀬名さんって、素敵ですね……。』
あれっ?!
社内の男性陣には無関心だったはずなのに。
瀬名さんには、そうでもないみたいね。
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