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どうしたらいいんだろうか。 買い物途中で寄った、カフェ・コーヴァ。 ミラノの自宅に戻ってポストを確認したら、この前スーツを買ったショップからダイレクトメールが届いていて。 特に何か買うつもりはなかったけど、見に行ったら好みの革靴とカットソーを見つけて、結局買ってしまった。 ……どうしたらいいのか。 火曜に日本を発ってから、時間が空くとこればかりが俺の中を支配する。 後悔するのは、嫌いだ。 でも、今回はそれを受け入れている。 彩星を、無理にでも呼び寄せたらよかった。 ミラノに居ても、時差はあるけど日々の業務に支障はない。 営業課にいるならそうもいかないけど、企画部にいるなら可能なはずなんだ。 でも、俺の私情で人事を動かすわけにもいかないし、葉月や山崎という後輩が彼女を慕っている限り、それは出来ないことで。 どうしたらいいんだろう。 天変地異が起こっても、きっと変わることがない物理的なこの距離が恨めしい。 宣戦布告は、もっと軽いものだと思っていたんだ。 俺が彩星の彼氏だと言わなくても、簡単に彼の気持ちを萎ませられるって。 あんなに本気になっている木崎さんが、今は少しだけ俺を怯ませている。
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