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こっちに戻ってきた翌日、正式に帰国する辞令が下った。
10月半ば。ミラノでの仕事の進捗によるけど、恐らくそんなにズレることはないだろう。
それまで帰国することはない。
社の花火大会は、今年も行けないだろうな。
今日も彩星の浴衣姿の写真を眺めては、溜め息が出る。
本当に、俺の調子を狂わせる女。
こんな女がいるなんて。
必要以上に群れない。
落とせそうなのに、それを許さない何かがあった。
でも俺は、手を出せずにはいられなくて。
そして、彩星の涙は、いつも本物だった。
媚びるための涙は、絶対に流さない。
仕事もプライベートも、楽しそうにしている。
俺といる時に見せるはにかんだような笑顔は、他の誰にも見せない笑顔で。
触れると思わず反応してしまう、素直な身体。
細いくせに、あって欲しいところはちゃんと丸くて。
その魅力を知っているのか分からないけど、彼女の選ぶランジェリーは、外見とギャップがある。
全てが俺の理想通り……ではないけど、それを押し付けるのは違うから。
こんなに愛しくて、手放したくなくて、壊したくて、苛めたくて。
一緒に居る時間が、楽しくて嬉しい。
大切に、守っていきたい。
そう思える女にやっと出逢って、俺の彼女になってくれたのに。
彩星の気持ちが俺にあるって、信じているのに、常に他の誰かに取られそうで。
木崎さんに、持っていかれそうで。
自分の無力さに嫌気がさす。
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