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まだ1課にいた瀬名さんはデスクで電話をしているけど、英語で話していて。
ちょっと待ってというジェスチャーに、ウインクのおまけ付き。
葉月ちゃん、瀬名さんみたいな人がタイプってことだよね。社内の男性陣に興味がないって意味は、恋愛しないってことじゃなくて、相当の面食いってことか。
『ごめん、ごめん。なんかバタバタしててさ。』
瀬名さんと向かうのは、簡易打ち合わせのスペース。
『葉月ちゃんから受け取りました。これってOKってことですか?』
『そうそう。客先担当が海外に行ってたみたいで返事が遅くなったらしいんだけど。今電話で話してたのもこの件で、最終確認してたんだ。いいアイディアだから、あとはもっと詰めていこうって言われたよ。さすが、彩星ちゃん!』
『では、詳細に考えていきますね。ヒントになりそうな資料あれば、ランチの時に葉月ちゃんに渡してもらっていいですか?』
『あ、もう知ってるの?彼女、可愛いから誘っちゃった。』
グレーのスーツにラベンダー色のシャツを着た瀬名さんが、眼鏡を掛けて資料を持ってきた。
『これ全部、客先から届いた資料。重たいから葉月ちゃんに渡すわけにもいかない量でしょ、これ。企画部までお持ちしますよ、彩星さま。』
半分ずつ分け合って、一緒に35Fへと向かう。
『葉月ちゃん、いる?』
扉を開けて早々、瀬名さんが葉月ちゃんを呼んだ。
『せ、せ、瀬名さんっ?!』
『あ、いたいたー。』
私のデスクに資料を置くと、立ち上がったまま固まっている葉月ちゃんのところに瀬名さんが向かう。
『時間になったら、エントランスにいるからね。』
『は、はいっ!』
葉月ちゃんの手には、瀬名さんの名刺。携帯番号が記されているタイプなのは、名刺に赤線が入っているので一目瞭然。
慌ただしく企画部を後にする瀬名さんの背中に、葉月ちゃんはボーっと見惚れていた。
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