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『ふぅっ。』
今日のため息は、昨日のとは全く違う。
予想以上の好感触だった。
これには遠藤部長もびっくりしていたけど。
何よりも嬉しかったのが、客先から言われた一言だった。
『御社のデザインは、本当に素敵ですね。是非、日本の桜で改めて見せていただけませんか?香りも桜の香りを混ぜてみましょう。』
飛び上がって、やったぁーって叫びたいくらい。
それに、大好きな日本を取り入れてくれるなんて。
苦手だった客先の担当者が、突然いい人に思えてきた。
『高梨さん、三浦部長から。』
日本が定時を過ぎた頃、部長から電話が入った。
『彩星、聞いたよ。良かったなぁ。』
『はいっ。本当にホッとしました。それに、桜を取り入れてくれるって言われたので、もっと嬉しくなっちゃいました。』
『ハハ、そうか。向こうも傾いてきてくれるってことかな。』
『傾くってどういう意味ですか?』
『いくらうちが日本の会社で、デザインを含めた企画担当が彩星だからって、日本贔屓になることはそうそう無いことだと思うんだよ。きっと彩星のことも認めてきてくれてるってことかもしれないと思って。』
部長の声の後ろから、武田さんの声が聞こえた。
そうだといいな。
もっとこのブランドに携わりたいし、こっちにいる間たくさんのものを生み出していきたい。
『ごめん、ミーティング始めるから、またね。遠藤部長によろしく。……Passez une bonne journee.』(良い1日を。)
『Merci.Bonne soiree.』
(ありがとう。良い夜を過ごしてね。)
ふふ…フランス語でお話しちゃった。
なんか、照れちゃうな。
今日は、帰ったら桜のデザインをしなきゃ。
期限は変えてもらえなかったし、もうひと頑張りしよう。
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