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新作の売れ行きを見に、デパートのコスメブースに来た。
手に取る人が、どんな反応を示すかがカギ。
人数はもちろんだけど、それよりも反応が見たくて。
厚着になる季節に似合う、温かみのある香り。
新雪のような真っ白なボトルは、手に馴染むサイズの楕円。
シンプルだけど、万人に受け入れられやすい形。
香りは好き嫌いがあって、どこかに合わせるのが難しい。
基本的に嫌われない香りは、もう飽きるほどあって。
でも、このブランドの香りってイメージしやすいものがいいって思うから、ほんの少しオリエンタルな感じにした。
結果、概ね良好…ってとこかな。
店員さんにも、実際に売れ行きとか感触を聞いてから帰ろう。
『ただいま戻りました。』
『あぁ、お疲れさま。どうだった?』
遠藤部長が気にしているのは勿論、市場調査してきた件。
『悪くはないと思います。店員さんも、好感触だって言ってました。前回の春夏と比べると、見た目の華やかさが抑えてあるので、その辺がどう転ぶかって感じだと思います。』
『そうか。ありがとう。あとは、直接先方からの連絡を待つだけだね……それから、夕方帰る前でも構わないから、時間もらえるかな。』
『はい。お声掛けしますので、よろしくお願いします。』
パリ時間の明朝までが、回答のリミット。
……もう、迷わない。
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