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『……そうですか。分かりました。高梨さん、本当にそれでいいんですね。』
『はい。もう、決めました。悩みましたが、これが私の最終回答ですので、人事課へお伝えください。』
本当にそれでいいかどうか、遠藤部長の視線が念を押している。
私はその視線を真っ直ぐ逸らさずに受けて、返した。
肩を上げながら、遠藤部長が大きく息をついた。
小刻みに、何度もうんうんと頷いて、私の気持ちに賛同しようとしてくれているのだろう。
『三浦部長へは、高梨さんがお話された方がいいでしょう。立場云々という事を抜きにして、明日の朝にでも話した方がいい。人事には私が報告しますから、同じようなタイミングで知らせてあげてください。』
『ありがとうございます。』
これで、また1つ前に進んだ。
明日の朝、部長に報告したら、どんな反応が返ってくるだろう。
『高梨さん。』
打ち合わせ室の扉を開けた私の背中に、遠藤部長が声を掛けた。
『何か言い忘れてましたか?』
『いや、私が聞いてなかっただけだ。……高梨さん、大切なものは見つかったんですね?』
『……はい。見つけました。それを、大切にできる選択をしました。』
『そうですか。それなら、大丈夫ですね。お疲れさまでした。また明日から、頼みますよ。』
『はい。お先に失礼いたします。』
これで良かったのかなって、ちょっと考えてしまうけど。
間違ってなかったって、思えると思うから。
その答え合わせが、1ヶ月後でも、1年先でも。
もっと先の未来でも。
正解だったって、言えると思うから。
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