Love hunter

21/25

232人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
今朝はいつもより1時間早く起きた。 正確に言うと、1時間早く目が覚めてしまったんだけど。 日本は15時頃。 今なら、話せるかもしれない。 もしかしたら打ち合わせが入ってしまったり、急な来客対応をしているかもしれないけど。 昨日のうちに、この時間帯に連絡するってメールしておいたから、きっと大丈夫。 ベッドに膝を抱えて座って、充電のアダプターを接続したままの携帯を手にする。 部長の社用携帯の番号を表示させた、携帯画面。 バックライトが眩しくて、思わず眉間に皺が寄った。 あ、あの時みたい。 部長が、初めて携帯にメールをくれた朝。 諦めようとして、麻耶に励まされて、結局揃って泣いて……目が腫れていた朝。 『よしっ…。そろそろ話さないとね。』 誰もいない部屋に、ただ1人いる自分へ話しかけた。 『……三浦です。』 『彩星です。今って大丈夫?』 『ごめん、ちょっとこのまま待ってて。』 懐かしい音がする。 ザワザワとした、企画部内の音だ。 そして、音が切り替わって、カツカツと響いて聞こえるのは、部長の靴の音。 廊下を歩いているのかな。 ちょっと途切れた電波。 そして、数秒後に、また良く聞こえるようになって。 『ごめん。屋上に移動してた。』 『うん。ごめんね、忙しい時間に。』 『……今日だったよな、リミット。』 『昨日の帰りにね、遠藤部長には伝えたの。 朝1番で報告しないと間に合わないから。』 部長が煙草を吸って、煙を風に乗せる音がした。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

232人が本棚に入れています
本棚に追加