Love hunter

21/25
前へ
/25ページ
次へ
今朝はいつもより1時間早く起きた。 正確に言うと、1時間早く目が覚めてしまったんだけど。 日本は15時頃。 今なら、話せるかもしれない。 もしかしたら打ち合わせが入ってしまったり、急な来客対応をしているかもしれないけど。 昨日のうちに、この時間帯に連絡するってメールしておいたから、きっと大丈夫。 ベッドに膝を抱えて座って、充電のアダプターを接続したままの携帯を手にする。 部長の社用携帯の番号を表示させた、携帯画面。 バックライトが眩しくて、思わず眉間に皺が寄った。 あ、あの時みたい。 部長が、初めて携帯にメールをくれた朝。 諦めようとして、麻耶に励まされて、結局揃って泣いて……目が腫れていた朝。 『よしっ…。そろそろ話さないとね。』 誰もいない部屋に、ただ1人いる自分へ話しかけた。 『……三浦です。』 『彩星です。今って大丈夫?』 『ごめん、ちょっとこのまま待ってて。』 懐かしい音がする。 ザワザワとした、企画部内の音だ。 そして、音が切り替わって、カツカツと響いて聞こえるのは、部長の靴の音。 廊下を歩いているのかな。 ちょっと途切れた電波。 そして、数秒後に、また良く聞こえるようになって。 『ごめん。屋上に移動してた。』 『うん。ごめんね、忙しい時間に。』 『……今日だったよな、リミット。』 『昨日の帰りにね、遠藤部長には伝えたの。 朝1番で報告しないと間に合わないから。』 部長が煙草を吸って、煙を風に乗せる音がした。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

232人が本棚に入れています
本棚に追加