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『……ヤバっ!!彩星、起きろって!!』
『んー。まだ眠い……今日お休みだよ、部長……。』
『休みだけど、休みじゃないって!起きろって!!間に合わない!』
間に合わない?何が?
だって今日はお休みだから、何かに間に合う必要なんてないのにな。もう部長は仕事が好きなんだから。
『新郎新婦は早く入らないとダメって、プランナーさんに』
『あぁーっ!?今、何時?』
今日は、待ちに待った結婚式。
日本に帰って、1年と4ヶ月。
毎日、嫌になるくらいの猛暑。
夕方には、プールをひっくり返したような大雨が降ったりする季節。
こっちの企画部に戻ってからは一層忙しくなって、一昨日までバタバタで、昨日やっと書けた両親に宛てた手紙も、書きながら泣けてきちゃって……結局何時に眠ったのか記憶にない。
『私、昨日何時に寝たか分かりますか?』
『2時過ぎかな。テーブルで突っ伏して寝ちゃった彩星を、俺がベッドに運んだ時間。』
なんでこんなに眠いんだろう。
逆算したら、それなりに睡眠時間取れてるのに。
『早く出かける支度しよう。40分後には出るからね。』
シャワーを浴びるために急いで洗面室に向かって、着ていたルームウェアを脱ぐ。
『あーっ!!!』
『何、どうした?』
洗面室のドアを勢いよく開けて、部長が飛び込んできた。
『これ……。』
『あぁ、それ?……独身最後の記念。』
って、言われても。
今日が何の日か分かってるくせに…。
胸の下あたりに、紫に近い赤があった。
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