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昔から、結婚式は教会がいいって決めていた。
部長もこういう日は花嫁さんが主役なんだから、彩星がやりたいようにしていいよって言ってくれて。
結婚に憧れ始めた頃、一目惚れしたこの教会で……今日、私は部長の奥さんになる。
『おはようございます。本日はおめでとうございます。』
『ありがとうございます。今日は1日どうぞよろしくお願いいたします。』
プランナーさんに連れられて、支度のためのお部屋に通された。
『彩星ちゃん、おはよう。今日は人生で1番可愛く綺麗にしてあげるからね。』
友亜さんが、メイク道具やドレスのための小物一式を広げて待っていた。
『よろしくお願いします。』
『夏輝も、隣の部屋でビシッと決めてくるはずだから、負けてられないわよっ!じゃあ、メイクから仕上げていくから、ここに座ってね。』
打ち合わせの時に出した希望通りに、どんどん自分が変身していく。
ラメ感よりも、パール感のあるアイシャドウ。
ベースも素肌感がある仕上げにしてもらって、チークは幸せそうに見える、アプリコット系の色。
『あとは、これね。』
『はい。お願いします。』
ドレスのために、パリで2キロ増えた体重を落として、さらに絞った。
大好きなチョコも、2ヶ月封印。
部長が作ってくれるカクテルも、週1回の楽しみにして、我慢してきた。
そんなに痩せなくても大丈夫じゃないのって、部長は言ってたけど、せっかく選んでくれたドレスは背中が大きく開いたマーメイドだし、デコルテだって綺麗に見せたいし、二の腕だってほっそりとさせたかったから。
『彩星ちゃん、相当頑張ったでしょ?』
『人生で1番可愛く綺麗になるためですからっ!』
そう言ってから、鏡越しに友亜さんと笑いあった。
人生で1番可愛く綺麗になる日。
世界で1番、幸せになる日。
ーーその瞬間まで、あと少し。
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