Love hunter

4/25
前へ
/25ページ
次へ
また、この夢。 この前と同じように、私は空港を歩いている。 嬉しそうで、足取りも軽くて。 そして、ロビーのソファーに座っている部長を見つけたその時。 やっぱり、私は泣いた。 その様子を見ている私が、部長を見ようとしたら……どんどん遠くなって。 歩いてきた道を戻るように引き戻されて。 もう少しなのに…。 ハッとして目を開けたら、そこは見慣れたアパルトマンの天井。 遠藤部長から聞かされた人事の話が、あれからずっとこびり付いて剥がれてくれない。 強力な接着剤でくっ付けられたみたいに。 そして、それを無理にでも剥がそうとすると、今度は治りかけの傷を覆っていた瘡蓋が傷むような感覚がする。 渇いた喉を潤そうと、冷蔵庫からお気に入りのジュースをグラスに注いだ。 ふと、壁に掛けたコルクボードに視線が向いて。 ここから見る付箋の星は、近いのに遠くに感じる。 先週送ってくれたジュースに貼り付いていた、最新のラブレターが自然と思い出されて。 〈彩星、俺の大切な人でいてくれてありがとう。 もう少しでドレスが出来上がるみたいだよ。 彩星のウェディングドレス姿、綺麗だったよ。 Je voudrais faire de toi la femme la plus heureuse au monde. 〉 ーーJe voudrais faire de toi la femme la plus heureuse au monde. 貴女を世界で1番、幸せな女性にしたい。 一緒に居なくても、世界で1番幸せになれるの? 結婚をして、お互いを支え合って、想いあっていられたら…幸せだって、私は心から思えるのかな。 涙で、星がたくさんあるように見えるのに。 カーテンの向こうは、雨で…。 部長、早く……迎えに来て。 パリに来たばかりのあの日みたいに、今すぐ会いに来て…。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

232人が本棚に入れています
本棚に追加