第1章

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
気づいたら好きになってた。 小さい頃から、ずっとわたしの片想い。 同じ高校に入るために、実はものすごくがんばった。 今も、毎晩勉強して、授業についていくのが精一杯。 そんなことを、この人は知らない。 「帰るぞ」 クラスが違うのに、帰りに声をかけてくれる。 無愛想な幼馴染。 期待して、いいのかな。 でも、幼馴染は近くて遠い。 身を以て知った過去がある。 一緒に帰るいつもの河川敷。 茜色と紫が混じった雲の峰。 何か言った? 小さな声が聞こえて、わたしが尋ねる。 と、真っ赤な顔をして咳込んでいる。 「…風邪」 上目遣いで涙目になってる。 必死にこらえようとしてるのが余計つらそう。 風邪ひいてたなんて気づかなかった。 幼馴染も失格かも。 大丈夫? と言いかけたとき 「あのさ」 声がかぶせられて。 かすれた声に、不謹慎にも鼓動が早くなる。 咳をこらえる様子にハラハラしながら、次の言葉を待つ。 「…付き合って」 え? え? え? 付き合うって? わたしと? これって、こ、告白ってやつ?! 固まるわたし。 「…薬局」 え? 「薬、買うから」 あー。 そうですよね。 風邪薬、必要ですよね。 って、何なのもう!! 顔から火が出そう。 背中に変な汗かいてる。 恥ずかしすぎて顔見れない。 薬局への道をひたすら早歩き。 無言。 薬局からの帰り道。 無言。 いつもは、わたしが一人で喋ってる。 わたしが話さなきゃ、無言なんだ。 会話、してなかったんだ。 なんだか、すごく、切なかった。 わたしの家に着いたとき。 幼馴染はわたしを睨んでた。 「ひいてないから」 ? よく意味が分からない。 睨んでいた顔が少し歪んだ。 「…風邪」 わたしの頭に何かをポンとのせて、行ってしまった。 見ると、薬局の紙袋。 中身は、わたしがよく飲む栄養ドリンク。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!