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「あいつ…あんな笑い方できたんだな…」
仄暗い道を校門に向かって歩きながら独り言ちる。
普段はにやりと口元を歪めるか、人を食ったような笑い方しかしないあいつが。
正直驚いて、それ以上何も言えなくなってしまった。
「表情筋が死んでるわけじゃなかったんだな」
「誰の表情筋が死んでるって?」
「だからお前の……っうぇ!?」
校門を出たところでぽつりと口からこぼれ出た言葉に返答があり、素直に答えようとして……声の主に気が付いた。
「おま、なんでここに!?」
「来ちゃったー☆」
口元に薄い笑みを浮かべながら、声だけは「きゃっ☆」と語尾に星でも光っていそうなテンションで目元ピースを決めているのは、俺を半強制的に同居人にした親友…
イグナ=ドンナーその人だった。
つーかピースが壊滅的に似合わな…いやいやいや。
「来ちゃったー☆じゃねーよ。何でいるんだよ」
俺が眉をひそめると、イグナはピースをやめてむっとした表情で手を上着のポケットに突っ込んだ。
「昨日付で同居人になったはずの親友がいつまでたっても帰って来ねえから迎えに来たんですー」
今日は定時に終わるって言ってたのによー、口を尖らし、頭三分の一分高いところにある目が俺を見下ろす。
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