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学園からイグナの家兼ギルド【四季】までは徒歩で三十分ほどかかる。
帰ってきたときには、すでに十時になろうかという時刻だった。
カーテンの閉まった窓からかすかに漏れ出る淡い灯りが、アモルがまだ起きていることを伝えている。
「ただいまー」
ギルド【四季】の扉を開けてイグナが声をかける。
すると二階からぱたぱたと階段を下りてくる足音がして、すでに寝巻に着替えたもう一人の同居人・アモル=リーベが下りてきた。
「おかえりなさい!もう、遅いよ!」
ぷう、と頬を膨らませて怒るアモルは完全に女の子にしか見えないが、彼はれっきとした男だ。おそらくすっぴんであろう今の状態でも女の子と見間違うほどだから、もともとが中性的な顔立ちなのだろう。
「はは、悪ィ悪ィ。セリがなかなか出てこなくてなー」
イグナがそう言って笑うと、アモルは俺に視線を向けた。
「セリさん、僕もイグナもすっごく心配したんだからね?遅くなるときはちゃんと連絡頂戴?」
「ああ…ごめん。今度からちゃんと連絡します」
そう言って軽く頭を下げると、アモルはふっと笑った。
「わかってくれたならいいよ。さ、お腹すいたでしょ?ごはん温めなおすから、ちょっと待ってて!」
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