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アモルは笑顔でそう言って、またぱたぱたと階段を駆け上っていった。
アモルにまで心配をかけていたと思うと申し訳なくて、知らずため息がこぼれる。
するとそれが聞こえたのか、横からイグナに軽く小突かれた。
「おいおい、俺が聞きてェのはため息じゃねェんだけど?」
呆れたように言われ、俺はきょとんとイグナを見返す。
「…あ、」
少し考えて、久しく口にしていなかった言葉に行き着いた。
「…ただ、いま?」
口にするのが久々すぎて少々突っかかってしまったが、イグナは俺の頭にぽんと大きな手を乗せる。
そして、
「ああ、おかえり!」
そう言って、イグナは優しく微笑んだ。
その言葉が懐かしくて、俺は思わず視線を落とした。
「どうした?」
「…いや、何か…家族、みたいだなって」
言ってしまってから恥ずかしくなって思わず視線を逸らす。
イグナは一瞬驚いたのか黙ったが、すぐにははっと笑った。
「何で笑うんだよ…」
「いや、だってさ。今更何言ってんだよ」
「…は?」
「俺はもう家族だと思ってるんだけど?」
「へ…」
予想外の言葉に驚いて視線を上げると、イグナは同居を決めた時と同じ、とびっきりの優しい笑顔で俺を見つめていた。
その表情に心臓がどきりと不穏な音を立て、俺は見ていられなくて再び視線を逸らした。
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