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「ういー、あがったー…お?」
風呂から上がり、がしがしと濡れた髪を拭きながらリビングに入ると、ソファの隅でセリウスが丸くなって座っていた。瞼は下がりかけ、いつ眠ってしまってもおかしくない様子だ。
ソファの前のテーブルにコップが置いてあるということは、寝る前に水でも飲んでいたのだろうか。
「せーり、風邪ひくってば」
「んー…」
近づいて頭を小突けば、眠たそうな唸り声が返ってきた。つーか、
「髪濡れたまんまじゃねーか…」
「だって…めんど…」
呂律の回らない声で呟いたセリウスの頭をもう一度小突き、首にかけていたタオルを被せる。そのままわしゃわしゃと拭いてやれば、うう、と呻きながらもされるがままになっていた。
「よし、これでいいだろ…セリ?」
あらかた水分を拭き取り、タオルを退けてぽんぽんと頭をなぜる。
反応がないので顔を覗き込むと、瞼は完全に下りてその青い目を隠し、薄く開いた唇からはかすかな寝息が聞こえていた。
「おい…こんなとこで寝るなよ…」
軽く揺すってみたが、起きる気配はない。実に安らかな寝顔である。
「……」
さすがにこのままにしておくわけにもいかないので、二人分のタオルを首にかけ、丸まっていたセリウスをソファから抱き上げた。
「おわ、軽っ…」
思いのほか簡単に持ち上がったセリウスの軽さにぎょっとする。どう考えても成人男性の重さではない。
アモルに言って、明日からの食事の量を増やしてもらわなければ、と心に決め、ずり落ちそうになったセリウスの身体を抱き直してリビングを後にした。
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