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寝こけるセリウスを部屋まで運び、きちんと整えられた寝台に寝かせる。
「…ん…」
小さな声が漏れ、起こしてしまったかと思ったが、軽く寝返りを打っただけですぐに寝息が聞こえてきた。
「…まったく…」
ふう、と息をつき、なんとなく部屋を見回してみる。
綺麗に整頓された部屋には、必要最低限のものしか置かれておらず、何だかがらんとして見えた。
「んむ…」
「…ん、俺もそろそろ寝るか…」
ふと聞こえたセリウスの声に、視線を戻す。
時計を見ると、すでに日付は変わっていた。
寝返りを打ったために捲れてしまったセリウスの服を直し、掛布団をかける。
そのまま自室に戻ろうと踵を返…
「……ん…いかな、で…」
「!」
しかけ、何かに引き止められて思わず振り返った。
見ると、寝ていたはずのセリウスが俺の服の裾をつかんでいた。
「セリ…?」
驚いてセリウスの顔を覗き込む。頬にかかる髪を払うと、閉じた瞼から零れた滴が頬を伝い、シーツを濡らしていた。
「…かあ、さ…」
かあさん、と。
唇から零れた言葉に、目を見開く。
セリウスの過去の話は聞いていた。彼の母親がすでに亡くなっていることも、家から追い出されるように学園に入ったことも…彼が、家族を失ったことも。
……だからだろうか。彼の遠慮を押し切って同居を決めたのは。
確かに一人暮らしをしているセリウスの壊滅的な食生活を、親友として何とか改善してやりたいと思ったのは本当だ。
同時に、彼の家族になりたいと思ったのも。
…同情だと、思われるだろうか。
だが、ただの同情で『家族だと思っている』と言えるほど、俺は優しくはないつもりだ。
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