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寝台に腰かけ、眠るセリウスの頭を撫でる。
何度か撫でると、ぐずるように顰められていた眉からしだいに力が抜け、寝息が穏やかになった。
それでも俺の服の裾を離さない手に苦笑し、そっと裾を引き抜く。
ぱたりとシーツに落ちた手をどかし、セリウスの隣に潜り込んだ。
彼を運んだら自分の部屋に戻るつもりだったのだが、魘される彼を見てしまえば、なんとなく一人にできなくなってしまった。
腕を枕にして寝ころび、未だに濡れているセリウスの頬を撫でる。
くすぐったそうに身をよじる彼が何だか愛しくて、起こさないようにそっと引き寄せた。
そのうちに俺の瞼も落ちてきて、眠たい頭のまま、セリウスの寝顔を眺める。
すよすよと眠るその顔には、魘されていた名残はどこにもない。
「……おやすみ、セリ」
安心しきったように眠るセリウスにそっと囁き、瞼に口づけて俺も目を閉じる。
今夜はもう、過去の幻影に魘されることがないように。
いつか、彼が心から幸せだと笑える日が来るように。
セリウスの体温を隣に感じながら、心の底からそう願った。
翌朝目覚めたセリウスが心底驚いて寝台から落ち、頭にたんこぶをつくったのは、また別の話。
END
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