すべての始まり

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 『たっちゃん』から少し離れた真夜中の帰り道。麻悠と拓海は真っ暗闇の夜道を歩きながらこのような会話を始めていた。 「ねえ、拓海。今日はありがとうね。何から何まで。」 「ん?何が?」 「ふふっ…今更とぼけないでよ~。だって今日こんな幸せな結婚式ができたのも全部拓海のおかげだもん。仲人だってしてくれたし、式場にお客さんいっぱい来てくれたようにしたのも拓海だし!」  そう言って、麻悠は拓海に対して満面の笑みを浮かべる。  それに返すようにして拓海を笑みを浮かべたが、次に麻悠はふっと物憂げな笑顔に変えてこう言った。 「拓海にはね、何もかも感謝しているんだよ。昔からそう…私や涼太が困っているときに助けてくれたのも拓海、小さい頃涼太が他の子と喧嘩しているときに仲裁に入ってくれたのも拓海、私と涼太と拓海は三人でずっと一緒にいてくれた。そして、私達が結婚する際に立ち会ってくれた……嬉しかったよ。」 「麻悠……ありがとな、俺のことも忘れないでいてくれて。」  そうして、彼が麻悠に感謝の気持ちを口にした後、すうっと一息深呼吸をしてから次にこう言った。 「あー、俺は幸せだなあー。旦那になるのは涼太のはずなのに少し手伝っただけの俺が新婦の幼なじみからこんなに感謝されるなんて。これで思い残す事なんか何もない、我が一生に悔いなし。今だったら俺、いつ死んでもいいくらいだわ。」 「もーやだー、何言ってんの。拓海にはまだ千夏がいるでしょー。今死んじゃダメだよ。大体昔からの幼なじみに感謝するのは当然のことだし。それにね、もしも……」  麻悠が何かを言いかけようとすると、何を思ったのか途中で間を置き、そして彼に向き直り再びこう口を開く。 「何でもない、 今の忘れて。」
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