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その一方で、大地は玄関の隣にあった小窓から覗き込みながらこう言う。
「でも確かに変だよなあ。もう彼これ二十分ぐらいは経つはずなのに拓海の姿全然見えねーんだもんよ。」
「だよね。私もさっきからずっとおかしいと思ってたの。何かあったのかな…?」
俺は千夏のこの言葉でやっと事態が異常なことに確信し、意を決して立ち上がった。
「俺、やっぱり見てくるよ。」
「待って、私も行く。二人のこと心配だもの。」
この千夏の言葉をを聞いた直敏も「俺も」と言い、千夏と共に立ち、流石の明人も千夏のことはからかわず、心なしか同じように状況を少なからず理解していたのか無言で立ち上がった。
「じゃあ俺は店番もあるしここで待機してるよ。もしかしたら戻ってくるかもしれないし、いざというとき何かあったら困るしな。」
「ありがとう。もし帰ってきたらスマホで連絡してくれよ。俺も二人見つけたら報告するからさ。」
そう言って、俺は千夏達と共に店を後にし、大地と別れた。
持つべきものはやはり友というものだ。このときはまだそんな純粋なことを思い、人を信じるときがあった。
そうーーーーあの日が来るまでは俺は純粋で、純朴で、そして純真だったんだ。
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