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帰宅後、俺達は今日まで数週間住んでいた新築に帰って来た。
マイホーム。俺が結婚前に結婚資金と同時に稼いで買った白を基調とした三階建ての新築。
「マイホームでね。」
結婚式後のあのときの打ち上げの夜、そう言ってた彼女の言葉が甦る。本来ならば、その日の翌日に麻悠とともに引っ越して居住する予定だった。最も例の事件があったため、引っ越しは延期になり、退院してから三日後に住むことになったのだが。
そのためか、落ち着いてまともに家を見たのは今日が初めてである。あの結婚初日から色んなことがあった――俺はそう思っていたが、案外まともに夫婦生活を営んでいるものはいるのかな、とも思ってきた。
思えば、結婚するまでは幸せな結婚生活を互いがしたかったがためにあらゆることをやってはみたが、実際やってみると結果的には「住めばどこでもいいものなのか」とも思った。
何はともあれ、俺達は今日からちゃんとした新婚生活が始まる、ということだ。
もうあいつはいなくなってしまったけども。
そんなことを黄昏れで思うと、
「ねえ、涼太。あのね…話があるから聞いてくれる?」
麻悠がどういうわけなのか勇気を振り絞ったかのような顔つきでそう俺に声をかけてきたのだ。
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