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あまりにもお化け屋敷へ行こうとする子が多いから、注意の意味で置かれたのかな。それとも、土地の所有者の都合で置かないといけない理由ができたとか?
「どうする?」
アタシの心は決まってるけど、一応、みんなの意見も聞いてみた。最初はどんなにやる気満々でも、こういう看板が置かれているとどうしてもためらいは生まれるから、引き返そうって意見が出たとしてもおかしくない。そして、それが五人の内三人以上から出るようなら、そこでこの冒険は中断もやむなし。
そう思い、みんなの顔を見回した。でも誰も何も言わない。決意に満ちた表情には引き返そうという気配さえない。
アタシだけじゃなかった。みんなもここまで来た以上、とうに決心は固まっていた。…ちょっと残念な気もするけど、五人の心が目的のために一つになってることが素直に嬉しい。
無意識で手を伸ばしていた。そこにみんなが手を重ねてくれる。その行為で何も言わなくても気持ちを確かめ合い、アタシ達は禁止の言葉を無視して看板の横を抜けた。
またしばらく上り勾配の道が続く。さっきの小道程じゃないけれど上りの砂利道はともかく歩きにくい。
判ってたけど、お化け屋敷への道は物理的にも精神的にも困難だ。だからこそ、興味はあるものの向かうことができず、噂に怯えたり無駄にワクワクしたりする子が学校にはごまんといるのだ。
昨日まではアタシ達もその中の一人だった。でもこの先は違う。アタシ達は今日、絶対にお化け屋敷の正体を暴くんだ。
「あ」
先頭を歩いていた孝夫が声を上げる。その声の理由を目にしてアタシ達は足を止めた。
白い壁が見える。でもまだ遠い。近づかなきゃ。あそこへ行かなきゃ。その思いが足を動かし、ついにアタシ達はそびえる白壁の下へと辿り着いた。
「着いた」
「…本当に、来ちゃったね」
肝試しではなく、この壁の向こうに何があるかを知るための冒険。その心構えで来た筈なのに、この場に来たらどうしても緊張と怯えが湧いてしまう。
テレビの時代劇で目にする、お城をぐるっと囲んでる白い壁。あれにそっくりな壁が遥か遠くまで伸びている。二年前に一度は来ているから、近くで壁を見上げるくらいじゃそこまでドキドキしないと思ってたのに、いざこうして壁を見上げると、あの頃より背が伸びた今でもその高さに圧倒された。
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