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壁に威圧されて固まっていた足を、言葉を投げ合うことで元に戻し、アタシ達は白壁を時計回りに伝い進んだ。
門がどの辺りにあるのかまでは聞いてない。右回りか左回りかは忘れたけれど、壁伝いに歩いていたらあった、程度にしか先輩達は話してくれなかった。
多分、その大きさに動転して他の情報は頭から飛んだんじゃないかと今は思う。でも、位置なんか判らなくてもいい。歩いていればいつかつく。
そんなお気楽なことを考えて進んでいたけれど、さすがに一辺二キロ。道のりは遠い。だから気を紛らわせるため、何かないかと周囲に目を向けてたんだけど…その好奇心にある物がヒットした。
お化け屋敷の壁が白すぎる。そう感じられてならない。
どこまでいってもただただ白い。建てたばかりとまでは言わないけれど、壁には目立った汚れもない。
普通なら、雨風にさらされている内にどんな建物でも薄汚れてしまうのに、どうしてここの壁はこんなに綺麗なんだろう。
こんな、町外れどころか、ほぼ山の中にある建物…しかも、お化け屋敷なんて呼ばれている場所が綺麗なんて変だ。もしかしたら、ここには定期的に建物の掃除とか修理をする人がいるんだろうか。
そう考えると、綺麗さは、ここが誰かに管理されてる証拠になるから安心だけど、もしそうじゃなかったらの考えもあった。
本当に『もし』だけど、この壁が長い間雨や風にさらされても綺麗なままなのは、壁の中に何かとんでもないものがいて、そいつが暴れ出した時、それでも壊れない程の強い材質で作られているから…っていう可能性もなくはないよね?
そんなことを考えたら知らず体がぶるりと震えた。それ追い払うように強く頭を振ってみる。
ばかばかしいこと考えちゃった。こんな壁を壊せる何かって何? 普通に考えてそんなのいる訳ない。
多分、定期的に建物の修繕がされてるんだと思う。でもここはお化け屋敷って呼ばれる場所だから、ついつい変なことを考えちゃった。
「着いた」
歩きながらボーっとしていたアタシの意識に誰かの声が響き、アタシは足を止めて目前にある物を見据えた。
初めてここへ来て壁を見上げた時と同じ、驚きと、そこはかとない恐ろしさが込み上げてくる。
目の前に、聞いてた以上に巨大な門があった。
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