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そして、腕の中のノートの半分以上くらいが、大きな手によって、するりと目の前から消えてゆく。
「言えばいいのに」
「え?」
声がした方を振り返れば、白の開襟シャツしか目に入らず。
ゆっくりと視線を上へ移動させると
「羽瀬君?」
黒縁メガネが印象的なクラスメイトが、二十冊はあるノートを軽々と片手で持って、立っていた。
身長の低い私は、真後ろにいる長身な彼をかなり見上げないといけない。
「今日の日直、野々村だろ?」
「あ…うん」
「言えばいいのに。仕事しろって」
「……」
野々村君はクラスでもかなり目立つ存在で、話しかけるにはかなりの勇気が必要。
周りにいる女の子達も怖いし…
そんな言い訳を野々村君と仲の良い羽瀬君には言いづらくて、黙り込む。
「ま、いーや。これ、職員室まで?」
こくりと頷くと、羽瀬君は私から全部のノートを奪った。
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