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彼の唇がチュッと離れた音と、私のヘンな声が、きっと彼の耳にも聞こえてしまったんだと思う。
「消毒するだろ。」
被っていたニット帽は、彼の手の中にある。
一緒に私の体を掴んでしまえる大きな手は、今朝、私が鏡の前で頑張ってみた編み込みを、緩く解いていく。
何度もやり直して何十分もかかってアレンジした髪が、彼の手に崩されても、イヤだとは思わなかった。
彼の優しく撫でてくれる手は、甲が真っ黒で、所々ケガをして赤くなっている。
気には、なるのに……。
彼と同じ、消毒は出来なくて。
熱くてボーッとするのを、必死に、隠そうとしていた。
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