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そこにドラムも入って、歌詞も決まってないのにメロディーが決まって、体が勝手に動いていく……。
この感覚を止められなくて大きく酸素を吸った私は、お腹から声を出した。
歌詞の決まる、この瞬間が、最高にキモチイイ。
「こら、美桜。パパは仕事中ッ。邪魔をするなら帰りなさい。まったく……。暴れすぎッ。大丈夫か?」
目の前でクスクスと笑っているパパは昔っからちょっとイジワルで、きっと私が失敗したのを分かってるんだ。
私は、パパのようにはいかなくて、悪戦苦闘してるのに。
「はーい。心配しなくても大丈夫だよっ。ちゃんと体力もつけてるもん。いいなぁ、このコ。カッコイイなぁ」
「ほら、美桜、カメラ。忘れてるぞ?」
カッコイイベースと引き換えに手渡されたカメラは古いかもしれないけれど、私の大好きな人から貰った、大切な大切な、宝物だった。
私が床に置いていたから誰かが踏んで壊してしまう前に手に取ってくれたんだって、その笑顔を見れば分かる。
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