1.心の音

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「忘れてないもん……。今からお散歩して、この辺りの写真を撮るんだよ?」 「ママが喜びそうだね。いってらっしゃい。……美桜、凄く良かったよ。もっと悩んで、もっと楽しめ。」 「うんっ!」 パパは小さい頃から私をこういう自然の多い場所へと連れ出してくれる。 私の療養になるからと、お仕事なのにいつもママまで連れて、毎回ちょっとした思い出づくりの家族旅行だ。 スタジオは静かな場所にあるからリゾート地に遊びに来たみたいで楽しいし、庭というには立派な森がある。 思いついたメロディーに言葉を乗せて歌えば、足取りも軽やかで、いつの間にか庭を出て線路へと辿りついていた。 線路の上を歩いてカメラを構えると、ファインダーにもう少し全体を入れたくて、後ろへと自然に下がる足。 楽チンな靴を履いてきたから歩きやすいんだろうけれど、尖った石と枕木はぶつかり合って音を立てている。 その音も良いなぁ……と思っていた時だった。
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