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ドキドキと伝わる音は、私の音だと思ったのに、それに合わせて彼が息をする。
「……ぇ。」
それに気づいてしまったら、顔を上げる事が出来そうになかった。
痛いところはいっぱいあるのに、体中が麻痺したみたいになって、彼の胸に凭れてしまっている。
――どう、しよう……。心臓、くるしい……かもっ。
「オイッ、顔を見せろ」
「っ……」
――この声、……好き……だ。
はじめて聞いた彼の声は、私の体を震わせる。
間近で聞いてしまったのもあるけれど、彼の声は、薄々気づいていた、私の弱い、声だった……。
ずっと昔からイメージしていただけで、実際にそんな声の人に会えると思っていなかった。
ただ顎に触れられただけで……、一瞬で、赤くなる。
彼の指先は思ったより、優しい……。
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