第1章

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『4月27日の春うらら』  「うーん…」  時間は昼休みの15分過ぎたあたりの昼の中頃。  学年が一つ上がった時期だっていうのに、体調を崩してしまい昨日まで長い休みをとっていた。その習慣のせいか、病み上がりのせいかどうも生活リズムがズレてしまっている。  とはいえ、このまま昼休みを寝て過ごす訳にはいかない。少しでも腹に何か入れておかないと。  「…」  学食の列で待っている間、校内新聞に目を通す。  『ダメ! 絶対買わないこと!!』という見出しの一番記事の内容は、どうやら最近学生に話しかけて怪しい商品を売りつけてくる輩がいるらしい…  高校生にもなって、そんなのに引っかかるかよ…とつっこむと学食のおばちゃんに呼ばれ惣菜パンの金額を差し出した。    「なんだ、このバリケードめいた置き方は?」  雑多している教室よりも静かな屋上で食べたかったので向かったのだが…屋上の出入口前は雑に椅子と机で置かれていた。埃が溜まってなかったり不揃いな置き方は最近置かれたと予想できる。  ここまで来た手前どうしても屋上で食べたい…  「…よっし」  幸い置き方が雑だったためもあってか、なんとか通ってドアまで行けてノブを回すとあっさりと開く。これだけのバリケードだったのに何でだ…?  「あ…」  と思っていたら、先客がいた。  1年生か3年生だろう。長い髪が綺麗に揺れる女子がいる。  彼女は遠くの景色を見ていた様子だったが、俺がドアを開けた音に気付いたのか目が合ったのでお辞儀だけした。  「…」  黙々とパンを食べる。校庭や教室から聞こえる声は距離感のあるBGMのようで不快感が格段に少ない。屋上のベンチに腰を掛けて見つめる方向は彼女と一緒の方向…普段は何とも思わないがこういう時の桜は格段に綺麗に見える。  …下心じゃないが異性がいると余計に乙なようにも感じる。だからこそ花見っていうイベントは毎年行われるのかな?  さっ、食べ終わったし教室に戻るか…  「きれいだね」  「えっ…!」  終始、会話も無しで気まずかったので先客に挨拶だけして去ろうとしたら異様に驚かれてしまった…  「あっ! いや、桜が満開なんで…それじゃ!」  うぅ~む…やっぱり女子と話すのは難しい…時間もギリギリだし足早に教室に戻ろう。  午後は体育の授業からだ…
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