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私はアムルシャスの顔を見上げる。
彼の表情は真剣そのものであった。私はゆっくりと彼の近くへ歩く。
そして……
私は表情を和らげ彼の剣を手に取り、鞘から剣を抜く。そのまま彼の首もとへ剣を振り翳す!
一閃……
刃はアムルシャスの喉元に突き立てられた。
しかしアムルシャスは平静。信用していたと言わんばかりの表情で立っている。
「浮気したら許さないわよ」
私は剣を鞘へ収めた。
「そういえば名乗っていませんでしたね。私の名は…」
「「朝霧 華」」
「そうね、あなたは知っていて当然ね」
「しかし魔界の人間となるからには名前も変えなければならない。そうだな……」
アムルシャスは周りを眺める。
すると月桂樹が風に靡いているのが目にとまった。
「君の名前はローリエ。私の愛しき妻だ」
アムルシャスはローリエの頭を撫でる。
「ちょっ! 撫でるなーー!」
「よいではないかー」
(嬉しいけど恥ずかしい)
「こほんっ、ローリエよ、その剣だが打ち直すことが出来る場所はないだろうか。君へのプレゼントだ」
アムルシャスは少し照れながら切り出した。
「それなら良い鍛治屋さんを知ってます。明日の朝にでも行きましょう」
ローリエはそう言って湖のほとりに座り込んだ。その隣にアムルシャスが座る。
「私の国もこれくらい平和だったらな…」
アムルシャスの呟きをローリエは聞いていたが、あえて聞こえなかったふりをした。
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