すべての序章

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二人は八百屋のようなところで今夜の食事を調達した。 「今夜は何にしましょうか? 何でも作りますよ」 アムルシャスがいくつかの食材を購入しながら聞いてくる。 おそらく彼のなかでは作るものが決まっていると思われる。 「お任せします。とりあえず人間が食べられるもので」 忘れてはいけない。彼は人間の姿をしているがあくまで魔界の人間である。 変なものを作られたら食べられないし、生理的にもつらいものがある。 アムルシャスは頭の上に「?」と出ているかのように疑問の表情をしたがすぐに笑顔になって 「かしこまりました」 そう言って購入を済ませた。 その後いくつかの雑貨屋を転々と回って必要な物を揃えた。 時刻は夕方アムルシャスとローリエは湖のほとりに座っていた。 「それで、今夜はどこで寝食するのかしら?」 そう、ローリエが一番気にしていたのはそれである。 昨夜は野宿だった。体の汚れは湖の水で多少は流せたが、やはりお風呂が恋しい。布団で寝たい。 それに対してアムルシャスが笑顔で答える。 「それなら心配無用です。しっかりと宿を確保してますので。もちろん相部屋です!」 相部屋というところを強調してくる。しかし宿を取っているところは関心である。 「食事もお風呂も問題ありません。安心して私と初夜をともにしまs (グフッ」 ドスッ 鈍い音がなった。 ローリエがアムルシャスのみぞおちを殴った音である。 アムルシャスはよろけて片膝を地面につけた。 「何が安心してよ! 今一番危険なのはあなたよ! まったく…」 ローリエは顔を紅潮させて明後日の方向を向く。 「さすがは私の愛しき妻だ。なかなか良いストレートです。」 アムルシャスはみぞおちを擦って立ち上がる。そしてローリエへ手を差しのべる。 「さぁ、お嬢さん。私と共に愛の巣へ」 「っ!? だからその言い方やめなさい…もう…」 ローリエは怒ろうとしたが呆れと恥ずかしさが勝ったようで渋々と手を差し出した。
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