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ローリエは鞘をアムルシャスへ渡す。
鞘を受け取ったアムルシャスはその軽さに驚いた。
「この剣と鞘のバランスは使い手のことをしっかりと考慮されている……。それに柄と鍔のデザインと鞘のデザインが精密に計算されてシナジー効果を生んでいる。これほどの物が人間に作れるのか。さらに……(以下略)」
アムルシャスは何かに取り憑かれたかのように長々と語っていた。
数分後…
「終わったかしら?」
ローリエが語り終えたアムルシャスに尋ねる。
「申し訳ない。つい燃えてしまいました」
「はっはっはっ! 兄ちゃん面白いな。華ちゃんの面倒しっかりと見てやれよ。」
「もちろんです」
アムルシャスは先程までとは違って真面目な顔で真剣に答えた。
それを聞いてローリエは若干頬を紅潮させる。
「もう夕刻か。はえーな。俺も次の仕事やらなきゃならねーからな。その剣の名前を決めてくれ」
気が付けばもう日が傾いている。山々から太陽の光が神々しく差している。
アムルシャスの持っている剣がその光を反射させる。
「夕陽なのに朝陽みたいな光ね…」
ローリエがその光景に目を奪われて呟いた。
「日の終わりが日の始まり。まるで私たちのようですね」
アムルシャスが夕陽を纏ってローリエに面と向かう。
ローリエは一瞬だがアムルシャスが格好良いと思った。
「ならばこういう名前はどうでしょう。 『黎明の剣』。そしてこの歪んだ世界と関係。正とは呼べない。だからと言って不ではない。ならば長ける。つまり、レクテングル。」
「レクテングルね。なんか格好悪いわ。それだったらレクタリアの方が綺麗よ」
黙って考えていたローリエが不意に発言した。
「黎明の剣…レクタリア……。良い名前じゃないか」
鍛冶屋のおじさんが噛み締めるように言った。
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