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アムルシャスとローリエは剣を受け取り鍛冶屋をあとにした。
~その日の夜 宿屋~
「まったく、一緒に入ったって良いじゃないか…。それにしても黎明の剣レクタリア。この剣はあなたに相応しい美しさを持っている。」
アムルシャスは窓際に腰掛けてレクタリアを撫でていた。ローリエはというと現在入浴中である。
お風呂に一緒に入ろうと言ったら全力で殴られたので今は大人しくしている。
アムルシャスはふと外を眺めた。
「今日も月が綺麗だ。…でも何かいつもと違う。嫌な予感がする……」
しばらく外を眺めていると風呂上がりのローリエがやって来た。
「外なんか眺めてどうしたの?」
石鹸の香りがアムルシャスの鼻をくすぐる。彼も魔族とはいえ男である。好きな女性が石鹸の香りを纏っていたら少なからずとも反応はしてしまう。
普段のアムルシャスであればローリエに抱きついてしまうだろう。
だが、今のアムルシャスはそれどころではなかった。
彼の視界にはこちらへ向かってくる瘴気が見えていた。
山の中腹辺りからこちらに向かって広がっている。恐らく魔物であろう。
稀に魔界との結界が弱まって人間の生気を求めて魔物が人間界へとやってきてしまうことがある。
「ローリエ、これから言うことをしっかりと聞いて下さい」
普段とは段違いに真面目な表情をしたアムルシャスに肩を掴まれたローリエは驚きの表情を隠せなかった。
「大丈夫です。しっかりと聞いて下さいね」
ローリエは頷いた。
「こちらの世界に魔物が現れました。現在はあの山の中腹を移動していると思われます。あの魔物の狙いはこの町です。到着までおよそ10分ほど。いえ、もっと早いでしょう」
カランッカランッカランッ!!
アムルシャスが説明していると町の警鐘が鳴り響いた。
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