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「はぁ…はぁ…はぁ……」 ガサガサと道なき道を草むらを掻き分けて走る。とにかく走るしかない。 今はそうしなければ殺されると自分の中の本能が叫んでいる。 背後からは自分を目指して追いかけてくる十数人の男たち。暗くて正確な人数は分からない。 この林の中を走ること10分。そろそろ足に疲れが溜まってきている。息も荒く苦しい。 (誰か、私を助けて!) 声に出そうとするも声を上げればすぐに見つかってしまう。助けの声は心の中でしか上げられなかった。 (もう、足が動かない。つらい。苦しい。) 普段は弱音を吐くような性格ではないが、今回ばかりは死への恐怖と疲労からふとそんな単語が生まれてしまう。 とうとう足が動かなくなった。そのまま近くにあった木へと寄り掛かる。 追っ手が近くまで来ているのが気配からよくわかった。 松明のような明かりが1、2、3、4… 「ここまでなのかな…」 自分でも驚くような弱りきった声が口から溢れた。 木々の隙間から月光が自分を照らし出した。 「月はこんなにも綺麗なのにどうして照らし出される人間はこんなにも穢れた存在なのだろう。」 林の中を走り汚れた自分の手足を眺めて呟く。 「居たぞ! あそこだ!捕まえろ!!」 自分を探していた男たちにとうとう見つかってしまった。 もう抵抗する気力もない。 木に寄り掛かる自分を大勢の男が囲んでいる。 「さぁ観念しろ。悪魔の娘!」 「貴様のせいで俺たちの村が焼かれたんだ!」 「仲間の敵討ちだ!」 正面に立つ三人の男が口々にそんなことを言い始めた。
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