9人が本棚に入れています
本棚に追加
「もうちょっと考える時間を頂けるかしら」
もはやそう答えるしかなかった。アムルシャスの顔色を伺うが特に問題は無さそうだった。
アムルシャスは右手を口元へ移動させ考えるような仕草をした。
「仕方ありませんね。とりあえずここを離れましょう。さぁお手を」
アムルシャスは周囲の死体を見てから手を差し出してきた。
私は何故か抵抗する事もなくその手を取った。
するとアムルシャスはお姫様抱っこの要領で私を抱くとふわりと飛んだ。
そう、空を飛んだのである。
「貴方、人間じゃ無いわね」
私は怖がらなかった。むしろ楽しかった。
「私が人間ではないことや空を飛んでいることに怯えないとは… これは想像以上に面白いお方ですね。」
この時のアムルシャスの笑顔は本物だった。
彼も心から今の時間を楽しんでいる。
「言い忘れてました。助けていただきありがとうございます。出来れば貴方の事を教えて欲しいです」
私もアムルシャスに興味が湧いて空を飛んでいる間は質問攻めをした。
アムルシャスはひとつひとつに丁寧に答えてくれた。
「私は魔界の住人。魔界のひとつである狂楽國の魔王に仕えてます。とある用事で人間界へ来ていたところあなたが襲われて居たので助けました。」
「用事で来たって言うのは嘘じゃない?」
私はアムルシャスの表情の変化を見逃さなかった。
アムルシャスは一瞬引き攣った表情をしたあと何かを言いかけたが観念したように素直になった。
「本当はあなたに恋をしていました。それで少し前からあなたに迫る危険を察知して監視を…」
アムルシャスは若干照れているようだった。
最初のコメントを投稿しよう!