五里霧中編_漆

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  初めは確かに 結の願いを聞き入れようとここでの治療を受け入れた。 だけど、今は、多分、それだけじゃない。 ソファーで眠っている鏡を見た日、私は鏡に寝る場所を尋ねた。 鏡は何の躊躇もなく、優しい嘘をついた。 「客間で寝ているから、平気だ。」 鏡は私に沢山の嘘をつく。 そのほとんどに、私は気付くことさえ、多分、ない。 沢山の偽りに傷ついて、沢山の嘘で傷つけて、生きてきた。 その反面、それが私を救ってもくれた。 それでも、 彼の偽りはなぜか、いつも、私を傷つける事はなく 私の心を暖め、救ってくれる。
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