五里霧中編_陸

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  はぁ・・・、と深くため息を吐き出すと 鏡の身体がビクッと動いた。 僅かに彼の瞼が動いているのが分かる。 私は咄嗟に寝返りを打ったように、 鏡に背を向けて、シーツを被った。 少しすると、 ギシッと音を鳴らし、鏡が立ち上がったのが分かる。 間近に立った鏡はそっと私の頭を撫でて、優しい声で呟く。 「・・・・・・・・・・・・ゆき・・・」 何分か、鏡は私の傍にいて、静かに部屋を後にした。 その間中、 私の心臓は寝たふりがばれてしまうのではないか、と思うほど バクバクッと大きな音を立てていた。
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