39人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーーお店はバタバタしていて、落ち着いた時に時計を見るといつの間にか16時を回ってしまい、私は焦ってエプロンを外し
「あの!恵美子さん!厨房の皆さん、すいませんが、お先に失礼します!」
「はーい!お疲れ様~」
「あ!もぅこんな時間!ごめんね実桜ちゃん、時間過ぎちゃって」
「いえ、全然大丈夫です!」
と答えながらも、内心はかなり焦っていた私。
鞄を持ち、お店を出ると、私の足はこの真夏の暑い中を夢中で走り出していた。
ただ雨上がりの後だったからか、少し涼しく感じるが、私の額にはきっと汗をかいている。
ハァーハァー…息切れをし桜林公園に着くと、ゆきの姿を探した。
この公園は春になると桜の木がキレイに並んで桜並木になっている。今は緑でいっぱいで、すごく素敵な場所。
遊具とかは無いが、ベンチがたくさん置いてある。
今日は朝に雨が降っていたせいでベンチも濡れていて、誰も座っていない。
…ゆきも座っていない。
ハハ、もぅさすがにいないでしょー。
俯き、自分に呆れて笑ってしまう。
「ハァ…メアド聞いとけば良かった」
「今から交換する?」
え?この声…背後から声が聞こえ驚き、後ろを振り向く。
「ゆ、ゆき…」
「…? おつかれ」
ゆきは私の頭の上に右手を乗せ、ポンポンッと優しく撫でてくれる。左手には本を持っていた。
私は待っててくれたゆきの優しさと、嬉しさで今にも涙が溢れてきそうになる。
この手…好き。大きくて、包まれた感があって、あったかくて安心する…。
でも私、すごい汗かいてる気がする。
顔を上げ、ゆきの顔を見る。
「…ごめんね、遅くなって」
「本読んでたから、以外とあっという間だったよ」
左手で本を見せてくれて、この人はホントにもう!どんだけ優しいんだろ。
私は目に溜まっていた涙を拭う。
「汗?…泣いてるの?」
ゆきは少し驚いた顔をしたが、ニッとあのステキなスマイルをして、私の髪をクシャクシャし頭を撫でてくれる。
最初のコメントを投稿しよう!