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「お待たせしました…どうぞ」
いつものようにコースターの上にアイスコーヒーが入ったグラスを置き、立ち去ろうとした時。
「ねぇ。…あだ名に君付け変だから“ゆき”でいいよ」
「あ、は、はい!了解!」
「プッ…また挙動不審」
あ!また笑った!
私が挙動不審になると笑うのか!
ん?バカにされてるのか?わざとじゃないのになぁ。
「すいませーん」と他のお客さんに呼ばれたので、ペコっと頭を下げその場を離れる。
てゆーか、ゆきって呼んでいいの??
ゆき…。心の中で呟くと顔が真っ赤になる。
どーしよう、嬉しい!
「実桜ちゃん!そろそろ上がっていいわよ~」
バタバタしてたら、あっという間に1時間が経ち、恵美子さんに言われなかったら気づかなかった。
「あ、はい!では、お先に失礼します!」
恵美子さんにペコっと頭を下げ、お店のエプロンを外しながら、ゆきの座っていた席を見るといつの間にか誰もいなくて
あー帰ったのか…気づかなかった。
バックを持ち、外に出ようと扉を開けるとかなり雨が降っていて
傘忘れたーどうしよ。恵美子さんに借りようかな。
「おい」
おい?雨の中、傘をさしてお店の前で立っている人に声をかけられ
「え!あれ?ゆきく…ゆき?」
そこにいたのは、ゆきだった。いつもの癖で君付けで呼びそうになる。
「傘、ないの?」
「あー、うん。雨降ると思わなくて…へへ」
「昨日からずっと天気予報で今日は雨が降るって言って、大雨注意報出てたけど」
「え?大雨注意報?!…し、しらなかった」
私はテレビとかあまり見ない。とくにニュースは。てゆーか、ゆきは傘があるのにどうして帰らないのかな。
「一緒に入ってく?」
「え!え?わ、私?」
「プッ…他に誰がいんの?」
ま、また笑われた!
ど、ど、どうしよう!相合い傘ですよ?嬉しい!嬉しすぎる!
「で、でも、帰り道が違うんじゃ…」
「ここでバイトしてるって事は、家はこの近くなんじゃないの?」
「まぁ…近く?近くかな」
「送るよ、俺の家もそんな遠くないし」
「え!そ、そんな悪いよ!」
「ほら、行くぞ」
言われるまま、一緒にゆきの傘に入って歩き出す。
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